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Oct 20, 2010

5

イラストレーター

vol.5 東海林巨樹

vol.4黒緑LESSからバトンが回ったのはイラストレーターの東海林巨樹さん。 縦横無尽に線を描き独特な手法によりキャラクターを誕生させるドローイングと、彼独自のFIX感から生まれるコラージュはまさに不確定要素の中にあるアート。こだわらない事にこだわり、偶然を追求した先には完成された必然があり彼の世界がつまっています。現在のアートワーク・制作方法からとても興味深い幼少の頃の生活に至るまでたっぷり聞いてきました。インタビューと同時に不思議なキャラクターとコラージュ作品もお楽しみ下さい。

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works



whink(以下:w)前回の黒緑LESSのお二人から東海林さんのもとにバトンがまわってきました。よろしくお願いします。まずは、自己紹介をお願いします。


東海林巨樹(以下:s)はい。1980年生まれで現在30歳のイラストレーターです。5人家族の末っ子です。生い立ち的なことを言えば、父親がキリスト教の牧師で、両親共に絵の勉強をしていた訳ではないんですが、いわゆる普通の人に比べて絵が上手くて。今は全然描いてないと思うんですが、昔はよくスケッチに連れて行ってくれたり、ぬり絵が欲しい、と母に言ったら、さらさらと紙に描いてくれたりしました。なので小さい頃から自然な形で絵に触れていたように思います。色々なものにあまり執着心がない性格なんですけど、ひょっとしたらそれは引っ越しが多い家庭だったことが関係してるような気が最近してます。基本的に小さい頃からあまり変わっていないと思います。

w:現在の制作活動を教えて頂けますか?


s:えーと、イラストレーターとしてCDジャケットとかTシャツのデザインとかレストランの絵などを描いたり、絵を描いて展示したりZINEを作ったりしてます。描く絵は人の顔だったりキャラクターっぽいものが多いですかね。あとはコラージュや、色鉛筆で細密画描いたり風景のスケッチもたまに描いたりします。作業行程は全部アナログで、編集作業以外は全て手で描いています。

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w:展示と言えば、前回初めて行われた個展がだいぶ印象的だったんですが。


s:はい、個展は去年初めて行ったんですが、作家を名乗った以上定期的にやっていかないとなーと思いました。あれから多少展示を意識するようになりました。

w:初めての個展とは思えないくらい壮大なスケールでしたね。


s:絵はずっと描いてたけど展示は大学出てからずっとやってなくて。その分頭の中で妄想が広がっちゃって、自分の中でハードルを上げちゃってたんですよ。それなりに自分でも納得いって、尚かつ次に繋がるような展示になんないとヤだなーって思ってたので、かなり自分の中では気負っていました。だから展示前は悪夢とか見てました(笑)。色んなスタンスの人がいるから一概ではないんですが、自分の場合は気負ってやった方が良いのかなって思います。怠けちゃうから(笑)。作品自体は細々した物が多いので壁にどんどん貼っていったんですけど...釘の数とかスゴくて。最初は一枚ずつこのくらいの間隔でって確認しながら貼ってたんですけど、それじゃ全然終わらないって気付いて最後の方は焦ってガーって貼って行く感じになってましたね(笑)。友達にも手伝ってもらって、結局全部貼り終わって目録も出来たのはオープン2日目でした。今思えばもうちょっとゆるくやって良かったって部分はありますけどね。最初だったし、一人だったから。

w:東海林さんの作品で会場がひとつの大きなコラージュ作品が出来上がっていましたね。


s:ああ、そういう感じはあったかも知れませんね。No.12 GALLERYは割と小さな箱だけど、でもその中を作品で一杯に出来たということは嬉しかったですね。見に来てくれた友達に「壊れたおもちゃ屋みたい」とか言われて、嬉しかったのを覚えてます。

exibition.jpgのサムネール画像



線と物から生まれる不確定要素



w:東海林さんの絵は憎たらしいんだけどどこか愛くるしいキャラクターのイメージがあるのですが、それらが描かれる制作方法等教えて下さい。


s:そうですねー、ドローイングは線で遊ぶような感覚が自分の中にあるんですけど...何も考えずにとにかく手を動かして、そのうちスイッチが入る瞬間があったりなかったりする繰り返しですね。テレビ見ながらとか、いつ寝てもいいような格好で寝転がりながら描いてます。もしかしたら、憎たらしいっていうのは描いてる姿が憎たらしいからかもしれないですね(笑)。目あんま開いてないですもん。手元見ないで描いていて、時々見て「あーここ顔みたいなのができてる」とか、何か気に入った形があると本腰を入れて描き込んでいったり、その部分を引き延ばして大きく描こうってなったら木枠と紙を買って来て、適当に描いた一部分を今度は陰影付けて緻密に描いて行くっていう感じですね。グニャグニャ描いていって、線の集合体でおしまい、っていうよりは、そこから何かキャラクターを生み出したいです。でも最初からこんなキャラクターを描きたい、とかも全然無くて...適当なグニャグニャの線から突如、妙な顔が浮かび上がるのが一番いいですね。不確定要素でできていった絵程、好きなものが多いです。自分の中での美意識や絵に対する考えも日々微妙に変化していて、その日はいいなと思っていた作品も数日後にはいまいちだったり、逆もまた然りで。あまり考え込まずに気に入らない物は捨てればいいやって感じでラフに制作しています。基本的にキレイな物よりどうでもいいものを描くのが好きです。ネガティブな感情なりいびつな物や要素を見て、自分を通して作り出していくのが楽しいし、物を作る事の一番の良さがそこにあるのかなって思います。ネガティブなのに、最終的にはネガティブだけでは終わらないっていうこと。大事なのはどうでもいい事や適当な事を一生懸命やる事だと思います。

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w:今まで影響を受けた人物や作品などありますか?


s:手塚治虫やディズニーにはすごく影響を受けていると思います。今それらを見ながら描いたりは全くしないですけど、自分がかわいいと思うフォルムを描くとそれに近づいてる気がします。すごくデザイン化されている理想のフォルムというか。星新一の本や、その挿し絵を描いていた真鍋博さんや和田誠さんの絵も好きでした。好きな作家はたくさんいるけど、身近な所では4つ上の兄貴の影響が大きいです。よく絵やマンガを描いてたし、そんなにおもちゃを買ってくれる家ではなかったので、何かすぐ自分で作ろうとする人でした。家と物置の隙間に拾って来た自転車を何台も積み重ねてて「あれ何がしたかったの?」って最近聞いたら「それぞれの一番良いパーツを使った、最高のチャリが作りたかった」って(笑)。手動式のスーパーマリオも作ろうとしてたな(笑)。あとは、家でほとんど唯一許されていたのが教育テレビでやってた海外ドラマで、古いのだと「大草原の小さな家」とか。「頑固じいさん孫3人」って現代設定のドラマが始まった時は「こんなにかっこいいティーンの生活を見れるんだ!」って兄弟全員興奮しました(笑)。「大草原~」だと時代のギャップがあり過ぎて、正直カルチャー的にピンと来てなかったんですね(笑)。片や「頑固じいさん~」ではデイビットっていう少年がスケボーに乗ってて。「やばい!!」ってなって、兄貴とスケボー作ってました。あまりにも好きすぎて、音声だけカセットレコーダーで録音して家族で出かける車の中で流してもらったり(笑)。そのあとは「素晴らしき日々」っていう60~70年代背景のドラマが始まって、それで色々な古い曲を知りました。

w:じゃあ幼少期にドラゴンボールやガンダムなど、いわゆる男の子が好きなアニメなどは見てなかったんですね。


s:そうですね、ほぼ見てないですね。キン肉マンは途中まで許されていたんですけど、ある時を境になぜか禁止になりました...。「筋肉...?だめ!」みたいな(笑)。ゲゲゲの鬼太郎は見てたけど。基本的に海外ドラマばかり見てたので、お年玉貯めてオールスター買ったり、アメリカ帰りの同級生からリーバイスを譲ってもらったりしてましたね。ビートルズ聴いたり。今考えると嫌なガキですね(笑)

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w:かっこいいですね。ちょっとうらやましいです。ところで、東海林さんと言えばドローイングの他にコラージュの制作もされていますが、コラージュについて少し教えて下さい。


s:コラージュをやるようになったきっかけは、話が小学生からいきなり飛ぶけど、大学の時に大竹伸朗さんを雑誌で知ったことです。初めて見た時に今までにない衝撃がありました。何でもありで、わけわかんないけどかっこいい!って。スクラップブックも元は普通のノートや本らしいんですけど、ものすごい大きさに膨れ上がってて、なんか限りなく化け物に近くて(笑)。そこから強烈にやってみたくなって自分でも始めました。それまで大竹さんのようなテイストの作品をさほど意識的に見てなかったので、それをきっかけに大竹さんが影響を受けたであろう作家の作品や、現代美術の流れなど後追いで少しずつ見るようになりました。

w;東海林さんのコラージュを初めて見た瞬間、私もやってみたくなりました。きっと誰にでもできるし、自分にしかできない一点ものが作れるのもコラージュの魅力ですよね。


s:そうですね、それはあると思います。コラージュは敷居が低いところも魅力だと思うし、単純にペタペタ貼るの楽しいですよね。自分の中でコラージュがより楽しくなった時があって、それは一生懸命貼った画面が気に入らなくて、剥がした時でしたね。結構剥がすのも勇気が必要なんですけど、せっかく貼ったから。でも思い切ってカリカリ剥がすと、裏側に狙っても絶対出なかったきれいな紙の断層とか現れたりして、もうほんと、細切れのカスみたいなのを、また裏返して画面に細かく貼り合わせていくんです。そしたら何かかさぶたみたいな訳分かんないのが出来て。その時に「剥がしもアリか」とか思って。最近はノートではなくて段ボールに貼ることが多いんですが、剥がし意外に「彫り」という行為もたまに有ります。段ボールは何層にもなってるから、表面の何層かを掘って、そこにも何か貼ったり、もしくはグラシン紙のような薄い透けた紙を段差の上に貼ると、透けてイイ感じになります。コラージュ自体は続けてると上手くなってきて、良くも悪くも。ある種のパターンのようなものはあるけど、それでも飽きないのは不確定要素が多いからだと思います。

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w:コラージュでこだわっている所はありますか?


s::うーん、FIX感ですかね...。FIX感というのは、要は自分の中での終わるタイミングなんですが、単純に言えばただ隙間がイヤなのかな...(笑)。一応隙間無く貼りたいんです。まあ、それだけでは無いんだけど。たまに友達と一緒にコラージュしてると皆とっくに飽きてるのに俺だけ貼ってて。「出た、無駄なFIX感」とか言われてます。

w:コラージュとドローイングの違いを感じる所はどこですか?また2つでリンクしていることはありますか?


s:見た目で言えば、コラージュは密度が高くて、ドローイングはスカスカですね。ドローイングの方が全然先に始めてるんですけど、コラージュを始めてからは多分絵は変わりましたね。どう変わったかと言うと、たぶんアプローチの仕方みたいなもので、コラージュはあまり考えてもしょうがないから流れでどんどん貼っていくんですが、ドローイングもほんと適当で。とりあえずグニャグニャとペンを動かして、責任感無い線でリズムを取ってるっていう。出だしのためらいが軽減する感じですかね...。あとは単純に制作の違いで言えば、コラージュは片付けが面倒なのでちょっとだけ気合いが必要ですかね。

w:日常の生活の中でドローイングやコラージュに反映される物事ってありますか?


s:全然わかんないんですけど、多分何かはリンクしてるんでしょうね。コラージュは人の顔とか体を切り抜いて貼っていくと何やらすごく楽しくなってくるんですけど、ドローイングも何かしら人の顔を描きたくなります。普段の趣味ってあまり思いつかないんですが、強いて言えば人の観察が趣味かなー?とか思っていて、それがひょっとしたら、反映されてるのかな...?あと人と話してる時、相手の顔を無意識に線でなぞってる事がよくあるから、なんか多少はあるんでしょうね。たまに風景とか人をスケッチするんですけど、繰り返すと自分の中に線が溜まっていくような感じがあって、それは多分ドローイングにも影響してるんじゃないかなって思ってます。




w:では今後、チャレンジしてみたい分野ややってみたい事とかありますか?


s:アニメーションに挑戦したいですね。11月に展示があるんですけど、それが終わったら本格的に制作に入りたいなーって。単純に絵が動いたら自分も嬉しいし、一枚の絵じゃピンと来なくても、"動く"ということで比較的ポップになるから、より人に伝え易いと思うんですよね。グニャグニャ描いてる絵がウニョウニョ動いたら楽しいだろうなーって。自分の絵柄は恐らくアニメーションと相性が良いと思うし、動画はやれる事がたくさんあるから、短編の作品を作りたいですね。あとは、ZINEもいいんですけど、ちゃんとした作品集も作りたいのと、海外でも展示してみたいです。大変だとは思うけど絵に言葉はいらないから挑戦してみたいですね。それから前々から言ってるけどいずれ絵本は描いてみたい。昔から絵本作家には憧れていたんです。

w:夢は広がりますね!そんな東海林さんですが何か告知とかありますか?


s:11月13日から12月2日までBEAMS GALLERYで"創造公園渋谷"というグループ展に参加します。並行して11月17日から29日まで吉祥寺の百年っていう本屋さんで展示がありますので、是非足を運んで頂けたらと思います。あと、ANTICSというサイトを友達とやっているのですが、近々ショップを併設することになってます。近しい作家の作品や、僕の作品もそこで購入出来るようになるので、是非楽しみにしていて下さい。

w:わかりました。とっても楽しみですね!では、最後に次にバトンを回す方を紹介して下さい。


s:はい、金属作家の中澤沙織氏にバトンを回したいと思います。同じ大学で、もともとは彫刻をやっていた人なんですけど、今は家具のパーツを鉄で作ったりしています。単純にさおちゃんが作る家具がかっこよくて好きなんです。彫刻で自分の作品を制作していた大学時代から、日用品などの生活に近い作品を作っている今への流れなんかもおもしろいし、興味があるのでさおちゃんを指名します。

w:おぉ!金属作家さん!しかもwhink初の女性ですね!!私も楽しみです。では次回は中澤沙織さんの所へ行ってきます。今日はどうもありがとうございました!


s:とんでもないです。こちらこそありがとうございました。

vol.5 東海林巨樹

イラストレーター。1980年生まれ、東京都在住。2006年より活動開始。


ドローイング/イラストレーション/コミック/コラージュなど、多様なメディアを行き来しながらも一貫した独特の世界感が持ち味。
カルチャー誌"OK FRED"、"someone's garden"へ挿し絵を提供する他、"BEAMS"や"And A"、"GERM"などアパレルブランドとのコラボレートを経験。また、"環ROY"(MC)や、グッドラックヘイワ(インスト・デュオ)、"steppin'ahead"(レーベル)関連のアートワークを手がけるなど、音楽とも密接なつながりを持つ。
2009年5月、No.12 GALLERYでの個展を皮切りに、アート集団 "黒緑LESS" のグループ展、ZINE'S MATEへの出品。2010年にはフランス大使館"No Man's Land"での展示とライブペインティング、また、針谷健二郎氏主宰のオルタナティブスペース "PUBLIC/IMAGE.3D" でのグループ展「PREVIOUS/NEXT」に参加するなど、精力的に活動している。
アート集団"ANTICS"主宰"Masaru Iguchi"や、ガラス職人"Kusanoshin"とのコラボレーションフィギュアでも知られる。

http://www.hetlight.com/
http://www.myspace.com/hetlight
http://www.antics.jp/
https://twitter.com/naoki_shoji

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